少人数でもエンタープライズ級の開発ができる時代 ─ AI×外部サービス連携の実践
少人数でもエンタープライズ級の開発ができる時代
「小さい会社に頼んで大丈夫かな…」
外注先を選ぶとき、こう思ったことはありませんか?
僕も逆の立場で考えることがあります。うちは少人数の会社だから、大企業の開発チームには敵わないのでは?と。
でも、AI時代になって状況は大きく変わりました。今日は、少人数でもエンタープライズ級の開発ができる理由を説明します。
この記事でわかること
大企業の開発チームが持っている「強み」、その強みを少人数で再現する方法、そして実際に使っているツール連携について、順を追って解説します。
特に技術的な仕組みに踏み込んで、なぜ少人数でも高品質な開発が可能なのかを説明します。
大企業の開発チームが持っているもの
大企業の開発チームには、コードを書く開発者だけでなく、コードをチェックするレビュアー、品質を担保するQA担当、サーバーを管理するインフラエンジニア、セキュリティの監視担当、そしてドキュメント整備の担当者がいます。
こうした体制をゼロから揃えようとすると、人件費だけで月に数百万円かかります。少人数の会社には到底無理な話ですよね。

大企業チームの役割分担
| 役割 | 担当人数 | 月額人件費(目安) |
|---|---|---|
| 開発者(コーディング) | 3〜5名 | 150〜250万円 |
| レビュアー(コード審査) | 1〜2名 | 50〜100万円 |
| QAエンジニア(テスト) | 1〜2名 | 50〜100万円 |
| インフラエンジニア | 1名 | 50〜80万円 |
| セキュリティ担当 | 1名 | 60〜100万円 |
| テクニカルライター | 1名 | 40〜60万円 |
合計すると、月に400〜700万円。これが大企業の開発チームの維持コストです。
AIと外部サービスで「チーム」を再現する
でも、今は違います。人間の代わりに、AIと外部サービスが役割を担ってくれるからです。
たとえば、開発者の役割はClaude Codeが担います。レビューもClaude Codeに「別の視点でチェックして」と依頼すれば、セカンドオピニオンを得られます。QAはPlaywrightによる自動テスト、インフラはVercelの自動デプロイ、セキュリティは自動監査ツール、ドキュメントもAIが生成してくれます。

ここで大切なのは、人間の役割がなくなるわけではないということ。むしろ逆で、人間がやるべき仕事に集中できるようになります。
全体の構想を描く。お客様の課題を理解する。どんな体験を提供したいかを考える。仕様を詰めるために打ち合わせをする。最終的な品質を確認する。これらは全て、人間にしかできない仕事です。
AIは「手を動かす部分」を代わりにやってくれるだけ。設計図を描き、完成品を検収するのは、あくまで人間です。これが「少人数でエンタープライズ級」を実現する仕組みです。
【技術解説】MCP(Model Context Protocol)による外部サービス連携
ここからは技術的な詳細に踏み込みます。Claude Codeが外部サービスと連携できる仕組みは MCP (Model Context Protocol) と呼ばれる標準プロトコルによるものです。
MCPとは
MCPは、AIアシスタントが外部ツールやデータソースと安全に連携するための仕様です。Anthropic社が提唱し、現在はオープンスタンダードとして広まっています。
実際の設定ファイル(.mcp.json)
私のClaude Code環境では、以下のような設定でMCPサーバーを動かしています:
{
"mcpServers": {
"github": {
"command": "npx",
"args": ["-y", "@modelcontextprotocol/server-github"],
"env": {
"GITHUB_PERSONAL_ACCESS_TOKEN": "${GITHUB_PERSONAL_ACCESS_TOKEN}"
}
},
"supabase": {
"command": "npx",
"args": ["-y", "@supabase/mcp-server-supabase@latest"],
"env": {
"SUPABASE_ACCESS_TOKEN": "${SUPABASE_ACCESS_TOKEN}"
}
}
}
}
この設定により、Claude Codeは以下のことが可能になります:
GitHub連携で可能なこと:
- リポジトリの検索・ファイル取得
- Issue・Pull Requestの作成・管理
- コード検索・コミット履歴の確認
- PRレビューの投稿
Supabase連携で可能なこと:
- データベースへのSQLクエリ実行
- テーブル・カラムの作成・変更
- RLSポリシーの設定
- TypeScript型定義の自動生成
- ログの取得・分析
セキュリティ上の考慮
MCP経由のアクセスでは、環境変数で認証情報を渡すため、コードにシークレットを埋め込む必要がありません。また、各サービスのAPIトークンには最小限の権限を付与することで、万が一の漏洩時にも影響を最小化しています。
【技術解説】CLAUDE.mdによる自動化ルール
Claude Codeを使いこなすポイントの一つが、CLAUDE.mdというプロジェクト設定ファイルです。
CLAUDE.mdとは
プロジェクトルートに配置する設定ファイルで、Claude Codeの振る舞いをカスタマイズできます。私は以下のような自動化ルールを設定しています:
## 自動処理ルール
### 🔴 自動実行フロー(プロアクティブ実行)
| タイミング | 自動実行する処理 |
|-----------|----------------|
| 機能実装完了時 | テスト生成 → テスト実行 → 失敗時は自動修正 |
| PR作成前 | セキュリティ監査(XSS, SQLi, 認証バイパス) |
| デプロイ前 | ビルド確認 → テスト全実行 → 問題なければデプロイ |
| エラー修正後 | 関連テスト実行 → 回帰テスト |
| DB変更後 | RLSポリシー確認 → 型生成 |
Subagent自動起動テーブル
特定のキーワードを検出すると、自動的に専門エージェントが起動する仕組みも構築しています:
| トリガー(キーワード) | 起動するAgent | 処理内容 |
|-----------------------|--------------|---------|
| 「なぜ」「エラー」「動かない」 | Explore | エラー原因を徹底調査 |
| 「セキュリティ」「脆弱性」 | Explore | OWASP Top 10を中心に調査 |
| 「計画」「設計」「アーキテクチャ」 | Plan | 実装計画を立案 |
| 「デプロイ」「本番反映」 | general-purpose | テスト→ビルド→デプロイ |
この設定により、「本番でエラーが出てる」と言うだけで、自動的にログ収集・原因分析・修正提案まで行われます。
実際に連携しているサービス
僕のClaude Codeには、10以上の外部サービスが連携しています。主要なものを紹介します。
🐙 GitHub(コード管理)
何ができるか: コードの変更履歴を全て保存。いつでも過去に戻れる。
Claude Codeとの連携: 「この変更をGitHubにプッシュして」と言うだけで、自動で保存してくれます。
技術詳細:
MCPのGitHubサーバーを使って、以下のような操作が自然言語で可能です:
僕:「新しいブランチ作ってPR出して」
Claude Code:
1. git checkout -b feature/xxx を実行
2. 変更をコミット
3. GitHubにプッシュ
4. mcp__github__create_pull_request でPR作成
5. PR URLを報告
🗄️ Supabase(データベース)
何ができるか: ユーザー情報やデータを保存するデータベース。認証機能も付いてる。
Claude Codeとの連携: 「テーブルにカラム追加して」「このデータ取得して」と指示できます。SQLを自分で書かなくても、AIが適切なクエリを実行してくれます。
技術詳細:
実際のMCPツール呼び出し例:
// テーブル一覧の取得
mcp__supabase__list_tables({ project_id: "xxx", schemas: ["public"] })
// SQLの実行
mcp__supabase__execute_sql({
project_id: "xxx",
query: "SELECT
* FROM users WHERE status = 'active'"
})
// マイグレーションの適用
mcp__supabase__apply_migration({
project_id: "xxx",
name: "add_email_verified_column",
query: "ALTER TABLE users ADD COLUMN email_verified boolean DEFAULT false"
})
// TypeScript型の自動生成
mcp__supabase__generate_typescript_types({ project_id: "xxx" })
▲ Vercel(デプロイ)
何ができるか: 作ったサービスをインターネットに公開する。自動でビルド・デプロイ。
Claude Codeとの連携: 「これデプロイして」で本番環境に反映。ログの確認もできます。
技術詳細:
Vercel CLIとGitHub連携により、以下のフローが自動化されています:
# プレビューデプロイ(PR作成時に自動実行)
git push origin feature/xxx
# → Vercelが自動でビルド・プレビューURL発行
# 本番デプロイ(mainマージ時に自動実行)
git push origin main
# → Vercelが自動でビルド・本番反映
🎭 Playwright(自動テスト)
何ができるか: ブラウザを自動で操作して、「ボタンが動くか」「フォームが送信できるか」をテスト。
Claude Codeとの連携: 「この機能のテスト書いて実行して」で、テストコード生成から実行まで自動。
技術詳細:
自動生成されるテストの例:
import { test, expect } from '@playwright/test';
test('ログイン機能', async ({ page }) => {
// ログインページにアクセス
await page.goto('/login');
// フォーム入力
await page.fill('[data-testid="email"]', 'test@example.com');
await page.fill('[data-testid="password"]', 'password123');
// ログインボタンをクリック
await page.click('[data-testid="login-button"]');
// ダッシュボードにリダイレクトされることを確認
await expect(page).toHaveURL('/dashboard');
// ユーザー名が表示されることを確認
await expect(page.locator('[data-testid="user-name"]')).toBeVisible();
});
具体的な会話例
実際にどんな会話で開発が進むのか、例を見せます。
僕:「ログイン機能を作って。メールアドレスとパスワードで。完成したらテストして、問題なければデプロイまでやって」
これだけで、以下が自動で実行されます。
1️⃣ Supabaseで認証機能を設定 2️⃣ ログイン画面のコードを作成 3️⃣ Playwrightでログインテストを作成・実行 4️⃣ テスト通過を確認 5️⃣ GitHubにコードをプッシュ 6️⃣ Vercelで自動デプロイ
人間が6人で分担していた「手作業」の部分を、1つの指示で完了できます。

ただし、「ログイン機能を作って」という指示を出す前には、人間の仕事があります。なぜログイン機能が必要なのか、どんなユーザーが使うのか、どんな操作体験が望ましいか。こうした構想やディレクションは、人間が考えなければなりません。完成後の確認も同様です。
【技術解説】CI/CDパイプラインの自動構築
開発の品質を保証するために、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デプロイ)の仕組みも自動構築しています。
GitHub Actionsワークフロー
name: CI/CD Pipeline
on:
push:
branches: [main, develop]
pull_request:
branches: [main]
jobs:
test:
runs-on: ubuntu-latest
steps:
- uses: actions/checkout@v4
- uses: actions/setup-node@v4
with:
node-version: '20'
cache: 'npm'
- name: Install dependencies
run: npm ci
- name: Type Check
run: npm run type-check
- name: Lint
run: npm run lint
- name: Unit Tests
run: npm run test
- name: E2E Tests
run: npx playwright test
- name: Build
run: npm run build
このワークフローにより、コードをプッシュするたびに以下が自動実行されます:
-TypeScriptの型チェック: 型エラーがあればデプロイを止める -ESLintによる静的解析: コード品質を担保 -ユニットテスト: 個別機能の動作確認 -E2Eテスト: ユーザー操作シナリオの検証 -ビルド確認: 本番デプロイ可能か確認
コストはどうなのか
気になるのはコストですよね。
正直に言うと、AIを使えば開発費がゼロになるわけではありません。構想を練る時間、仕様を詰めるディレクション、最終的なチェック。これらは人間の仕事であり、その人件費は当然かかります。
ただし、コードを書く・テストを回す・ドキュメントを整備するといった「手を動かす作業」の工数は大幅に圧縮できます。体感では、従来のやり方と比べて開発コストを1/3程度に圧縮できている印象です。

具体的なコスト比較
| 項目 | 大企業チーム | AI + 少人数 |
|---|---|---|
| 開発者人件費 | 150〜250万円/月 | Claude Code $200/月 |
| レビュー・QA | 100〜200万円/月 | 自動テストで代替 |
| インフラ管理 | 50〜80万円/月 | Vercel $20/月〜 |
| データベース | 別途 | Supabase $25/月〜 |
| 合計 | 400〜700万円/月 | 約5万円/月 + 人件費 |
※ 人件費(構想・ディレクション・最終確認)は別途必要
少人数だからこその「強み」
実は、少人数の会社には大企業にはない強みもあります。
まず、意思決定の速さ。「これやりたい」と思ったら、その日のうちに着手できます。大企業だと承認フローだけで1週間かかることもありますが、うちなら即日で動き出せる。
次に、柔軟な対応力。「仕様を変えたい」「やっぱりこっちにしたい」と言われても、チーム間の調整会議を開く必要がありません。すぐに方向転換できるのは、少人数ならではの機動力です。
そして、コミュニケーションロスの少なさ。人間が増えれば増えるほど、認識のズレや伝言ゲームが起きやすくなります。少人数+AIの体制なら、そうしたロスを最小限に抑えられます。
【技術解説】並列処理による効率化
Claude Codeのもう一つの強みは、並列処理です。CLAUDE.mdで以下のようなルールを設定しています:
### ⚡ 並列効率化
**待ち時間を無駄にせず、次のタスクを並行して進めること。**
| 待ち時間が発生する処理 | 並行して進める作業 |
|---------------------|------------------|
| テスト実行中 | 次の機能の設計・実装開始 |
| ビルド中 | ドキュメント作成、コードレビュー |
| デプロイ中 | 次のタスクの調査・準備 |
| API応答待ち | 他のファイルの編集 |
| npm install中 | 設定ファイルの準備 |
実際の並列処理例
ユーザー: 「機能A、B、C全部やろう」
Claude Codeの動き:
├─ 機能A実装 → テスト(バックグラウンド)
├─ 機能B実装 → テスト(バックグラウンド)
├─ 機能C実装 → テスト(バックグラウンド)
├─ 全テスト結果確認 → 問題あれば修正
└─ まとめて完了報告
人間が3つの機能を順番に実装すると3倍の時間がかかりますが、AIは待ち時間を有効活用して並列処理できます。
まとめ:規模ではなく「仕組み」で勝負する時代
AI時代の開発は、「人数」ではなく「仕組み」で決まります。
適切なツールを選び、適切に連携させれば、少人数でもエンタープライズ級の品質を実現できます。
大事なのは、「人間がやるべき仕事」と「AIに任せられる仕事」を明確に分けること。構想・ディレクション・最終確認は人間が担い、コーディング・テスト・デプロイはAIとツールに任せる。このバランスが、これからの開発の勝ちパターンだと考えています。
本記事で紹介した技術要素
- MCP (Model Context Protocol): AIと外部サービスの連携仕様 -CLAUDE.md: プロジェクト固有の自動化ルール設定 -GitHub連携: コード管理・PR自動作成 -Supabase連携: データベース操作・型生成 -Playwright: E2E自動テスト -Vercel: 自動デプロイ・CI/CD -GitHub Actions: 継続的インテグレーション
これらを組み合わせることで、少人数でも大企業と同等のプロセス品質を実現しています。
次回は「AI開発の効率を数字で公開します」というテーマで、実際の開発実績を具体的な数字で紹介します。
てんちょー(合同会社QUEST 代表) 普段はSIerで経営企画部員として働きながら、週末起業で高校時代の友人と共同創業。何をやるかも大事だけど、誰とやるか(生きるか)を起点に多岐にわたるビジネスを展開。
🌐 コーポレートサイト:https://llc-quest.com 🐦 Twitter (X):https://x.com/questceo_ai
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